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2018.11.04 Sunday

預金の仮払い制度の創設について

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    JUGEMテーマ:相続



    平成30年7月民法改正で制度が変わったうちのひとつ。
    今回は預金の仮払い制度について。

    他の制度と同じく、施行は平成32年7月まで。
    例によって、正確なところは法務省のHPで確認してください。



    これまでは、被相続人の死去が金融機関に知られると、ただちに口座は凍結されて、一切の引き出しができなくなります。
    遺産分割協議が整い、各種書類が揃えば、銀行(郵便局)にそれを提出して、やっと預金の引き出しや口座を移動したりといった作業ができますが、それにはけっこう時間がかかります。

    しかし、葬儀はすぐにやってきます。最近は都会では葬儀場不足でなかなかできないという事情もありますが、せいぜい1週間ぐらい。
    とうてい遺産相続には間に合いません。



    5年前に父が死去したさいには、大体230万円ぐらいの請求が葬儀会社から来て、けっこう焦って、弟と一緒に請求書の中身を検算した覚えがあります。
    香典が130万ぐらいだったので、持ち出しは100万。
    貧乏人でしたが、それぐらいの預金はあったので困ったことにはなりませんでしたし、後の香典返しは、とある百貨店の「友の会」に入っていて、その積立の商品券が2年分あったので、それを使い切って足りない分を少し足すぐらいでまかなえました。




    もちろん、持ち出した100万円遺産相続で返ってきましたが、特に揉めることがなかった私の場合でも処理までには1ヶ月以上は掛かっています。

    後に、「おじいちゃんが死にそうになったら、早めに預金を出しておく。そうしないと葬儀のときに困るよ」というのが、けっこうメジャーな裏技だと知り、なんだかなあ……と思いました。





    今回、創設された「預金の仮払い制度」はこうした問題点を解消するもので、被相続人の預貯金のういち、一定額を遺産分割協議が整う前に単独での払い戻しを認めるというもの。



    もちろん、幾つかの規則があります。


    • 相続開始時の預貯金の額☓1/3☓(払い戻しを行う共同相続人の法定相続分)まで

    • この計算式は個々の預金債権ごとに計算する

    • 金融機関ごとの上限額=150万円

    • 引き出した預金は以後の遺産分割で調整する



    となっています。



    これを見ていくと、例えば母が亡くなって相続人が兄、弟の兄弟二人、預金が600万円だった場合。
    兄が引き出せる金額の上限は

    600万☓1/3☓1/2=100万円

    となります。
    ただし、その上限額が150万を超えていた場合でも引き出せる訳ではなく、150万円で天井です。
    そして、この計算式は各個別の金融機関ごとに計算する。となっています。



    金額の上限が150万円なのは、葬儀代という仮定から、それ以上はとりあえずは要らないだろうという判断です。
    計算式で(払い戻しを行う共同相続人の法定相続分)で割り算することになっているのは、後に相続財産に組み入れて分割協議をするという前提から考えられたものでしょう。




    まだ制度の概要だけで、具体的な内容や手続きは判りません。
    例えば、法定相続人の数がわからないと引き出し額の上限を決められませんが、戸籍を一通り揃える前に法定相続人の数は確定できません。おそらくは推測でやるのでしょうけど、後で隠し子が出た場合は揉めそうです。

    また、現行の相続法の体系では、葬儀代金は差し引ける筈ですが、その基準と、引き出した預貯金は相続財産に加えるという考えとの整合性のとり方をどうするのか。
    おそらくは遺産分割をする際に、例えば100万引き出して80万葬儀代金に充てた場合は、20万のみを相続財産から引いて、辻褄を合わせるのでしょうが、その計算式が今の段階でははっきりしていませんね。



    この話題についても今後、続報が入ったらまた記事にしましょう。





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